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家を開くことのすすめ:デザイナー日高海渡

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日高 海渡 / swarm Inc.
代表取締役 / designer

コロナ以降の家の中でのチグハグ感

家で仕事をするようになって久しい。
そう感じている方も多いのではないでしょうか。
元々は毎日オフィスに通ってた方も、ある日急に家から出れなくなり、慣れないリモートワークを始めた日からかなりの日数が経ったかと思います。

家でのリモートワークが一般化したことにより、家の在り方についての考え方は大きく変化してきたと思います。

日本の家の間取りはnLDKと表記され、家の中にはリビング、ダイニング、寝室、水回りしかなかったはずなのに、リモートワーク以降は急に仕事場が家の中に必要となったことから、リビングががオフィスとして使われることになったり、ダイニングテーブルがオフィスデスクとしての役割を担うようになり、家に与えられたnLDKという表記はあまり意味を持たなくなりました。

こうして人々の生活は一変しましたが、家の形(nLDK)はそう簡単に変わりません。このズレが生む、日々の生活のチグハグ感は、今後の(=ニューノーマルな)家に対する考え方を柔軟にしてゆく原動力になるなのではないかと考えています。

そもそも家の役割とは?

歴史的に見ると、戦前の日本の住宅の中には職人のための仕事場、店先のような商空間、来客のための客間など、様々な機能を併設していました。
それが時代とともに職住が切り離されたことや、急激に普及したマンション、ギリギリまで小さく分筆された敷地によって住空間が最小化され、家はnLDKという形で整理され、仕事や商売や歓待といった他者との関わりを持つことで生まれる生産活動は行われなくなってゆきました。

しかしココロナ以降、家にいる時間が長くなり、リモートワークを初めとした様々なライフスタイルの変容により、<家は暮らす場所、オフィスは仕事をする場所>といった場所ごとの機能の振り分けが難しくなり、家の中で様々な生産活動の萌芽が見られるようになってきました。この萌芽はコロナ禍で感じつチグハグ感を解消するためのヒントになると考えています。

家を<生産の空間>へ

では具体的には、家での生産活動とはどういったことが考えられ、そのライフスタイルが産むメリットとはなんでしょうか。

・家で仕事することと家選び
単純な話ですが、家で仕事をするようになることで、少しでも広い空間に住むことができる契機になるかもしれません。会社としても社員が個々の家でのリモートワークを前提としていればオフィスの家賃やそれに関わる固定費を削減することで、住宅手当を上乗せできる可能性もありますし、個人で働いている人であれば、そもそも別でオフィスを借りず仕事部屋を併設した広い家を借りるなり購入することができます。
これは家というものが、何かを生産する空間という側面を取り戻すことで、家に対して払うお金の考え方が多様化し、どこのどれくらいの広さの家に住むかという選択肢が増えることに繋がるということです。

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・家に人を招くことと家のファン
家を生産の空間にするための方法は、家で仕事をすることだけではありません。
例えば私の知り合いは家を開き、月に何度もホームパーティーを行い人を家に招くことで、その会の少額の参加費の積み重ねで家の住宅ローンの一部を返済するという面白い試みをしている方がいます。人を招き、もてなすことでその場所のファンになった人たちがその試みを存続させるために少しずつお金を出し合う。そういう持続可能な試みです。これもある種の生産活動といえるのでしょう。

(詳しくはこちらの記事を読んでみてください。とても面白いライフスタイルです。 https://cowcamo.jp/magazine/column/poyohouse)

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・家自体が仕事をすること
あるいは、全ての住宅で許容されるわけではありませんが、スペースマーケットに代表されるような時間貸しのサービスで住宅の一部を他者に開放するという方法もあると思います。これはもはや、家主が居なずとも家自身が収益を上げる、言い換えれば、家が勝手に仕事をしてくれている様なフレームワークです。(https://www.spacemarket.com/

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ここであげた事例の共通点は家を他者に対して開いているということです。家を開くことで、そこに集まるメンバーも、そこで行われる活動も、これまでの家のあり方と大きく変わり、そこに住む人のライフスタイルを大きく変容させてくれると思います。ただし、その一方で現状の日本の家はその変容に対応できるような作りにはなっていないと思います。そこから生まれるチグハグさを解消させるために、家の形は変容し、人々のライフスタイルもそれに追随して変化していくことが求められていると思います。このことについて考えることが今、空間作りに関わる全ての人に必要なことなのではないでしょうか。

これからの家の在り方について

私自身、家で仕事をすることに加え、月に数回<家開き>という名前のイベントを行っており、インスタで家を公開しいろんな人に来てもらっています。(知り合いはもちろんのこと、DMで知らない方から連絡があり、家に遊びにきて来れたりします。)

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その繋がりが結果的に新しい友好関係に繋がったり、あるいはビジネスに進展することがあります。こういった活動は家を開くことで生まれたもので、それらはもはや<仕事とプライベート>、<オンとオフ>のようなはっきりと物事を区分するような価値観ではなく、いろんな活動が溶け合った柔らかな価値観だと思います。
そして、この価値観こそがコロナ禍のこの大きな時代の変化に対応するための一つの方法だと思います。

・家を自分もしくは家族だけで占有しないこと。
・家は住むためではなく色々な使い方が許容されてた空間でも良いこと。
・現状の日本の家の多くは他者に対してオープンであるように設計されていないので、その在り方を今一度考える必要があること。

この3つを念頭におきながら家づくりをすることで、今私たちが感じている住宅に住む事のチグハグ感を解消し、家という空間をもっと寛容で楽しい空間として作って行けるのではないかと考えています。


日高 海渡 / swarm Inc.
代表取締役 / designer
1988年東京都生まれ。東京工業大学大学院建築学専攻修了。アトリエ・ワン勤務後、独立し日高海渡建築設計を設立。同時に東京工業大学大学院塚本研究室博士課程在籍。個人で活動しながら株式会社ツクルバにてパートナーデザイナーとして空間設計を複数担当。その後、戸井田哲郎とHaT architectsを共同設立、複数の空間設計のプロジェクトを手がける。事業拡大に伴い、2019年5月に株式会社swarmを創業。代表取締役に就任。HP : https://www.swarm-inc.com/
insta : https://www.instagram.com/kaito.hidaka/


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ワークプレイスを軸に、様々な専門領域を持つクリエイターたちのシナジーによって、既成概念を超えたソリューションの提供を目指す。働き方や働く環境に関するご相談・お問い合わせはこちら:info@tcproject.co