あなたが毎朝スタバを買ってしまう、スタバが作る必然 Day6
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あなたが毎朝スタバを買ってしまう、スタバが作る必然 Day6

Tokyo Creators' Projectの須崎博紀と申します。本投稿は「#ニューノーマルな働き方2020」Day6の記事です。

Disclaimer
・本稿は筆者個人の見解であり、所属組織を代表するものではありません。
・不適切・考慮不足な点があれば、それは筆者個人の責任によるものです。
 筆者個人宛てにご指摘のコメントをいただけますと幸いです。
・日曜返上の執筆なので気が向いたときに手直ししうります。

本稿では、スタバのロケーションインテリジェンスを取り上げます。かなり荒いのですが、2020年は私の専門とする地理空間分析には、新たな挑戦があった年でした。新コロナに関するインサイトで地理空間情報を使っていないものはないと思えるほど、地理空間分析があっちこっちで使われました。2020年のおかげで、地図を使った分析は、もっと当たり前になっていくと考えています。

ちなみに、地理空間分析においての大きな貢献の歴史の始まりは1854年のロンドンで起こった「ジョン・スノウによる調査」です。その時もコレラという感染症の分析で、医師であるジョン・スノウ氏は、コレラの感染経路を同定すべく患者の家を訪ね、話を聞いて周りました。そこで、スノウ氏は、あるポンプ井戸の水が共通項であることに気がつき、井戸水がコレラの感染拡大の原因であると推測しました。

その推測に基づき、自治体がポンプのハンドルを外して井戸を使えなくしたことにより、コレラの感染拡大は沈静化したとのことです。地図を使った分析が感染症を止めた。そして、新コロナの今もたくさんもちいられている。まあ、こんなことでもないと、進まない分析分野ということが言えるかもしれませんが、ニューノーマルな働き方のひとつとしてくくらせてください。

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Wikipediaより

ロケーション分析を活用する企業

企業において、この地理空間分析を用いて成功している企業は、アマゾンなど、あまたありますが、スタバはわかりやすくて多くの地理空間分析者からリバースエンジニアリングをかけられる対象となっています。私が国内のスタバの分析をしていて面白いとおもったことは以下の点です。

1. 待たせるための空間設計と標準時間
2. P/Lモデルでは、ドトールより客単価が安い

国内コーヒーチェーン状況:スタバの一人勝ち

一人十色さんのNoteから、コーヒーチェーンは、ここ5年でドトールは成長はほぼ横ばい、スタバとコメダは成長。この違いは一体何?特に、ドトールとスタバの違い。

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標準作業の違い(早さのドトール、待たせるスタバ)

下記は、店舗での標準作業の違いです。

ドトール
エスプレッソやコーヒーは注文を受けたらすぐにその場で支払いをいただき提供いたします。
スタバ
バリスタが18秒から23秒の間にエスプレッソを準備しますので、ランプ下に行っていただきます。

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店舗レイアウトの違い(心理的な工夫をするスタバ)

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上がドトールで、下がスタバですが、スタバはバリスタがコーヒーを入れるという標準作業を守らせやすいようにするために、顧客を歩かせます。顧客に少しでも歩かせることで顧客の待ち時間のタイムクロックがスタートしないようにするという心理的なことを考えてのレイアウトを組んでいるとのことです。

ヴィジョンの違い(安さを提供するシステムのドトール、コーヒーにこだわるスタバ)

ドトール
当時300円だったコーヒーを、農園から卸売りなどの流通まですべて見直すことで150円で提供できる。 
スタバ
エスプレッソの新鮮さ、違いを知ってもらいたい。毎朝にコーヒーを。

財務モデルの違い(スタバのほうが実は客単価安い)

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財務モデリングからわかっていることは、客単価は実はほどんど変わらない(むしろスタバのほうが安い)。その分、客数が倍ほど違う。今回は費用比較をしやすいため、東京の賃料平均単価(26,000)を使って、坪数がどう変わるかをシミュレートした。

Takeaway:レイアウトの違いで顧客を待たせない工夫を行い新鮮なコーヒーにこだわれる

ドトールは、低価格指向である。商品単価が安価な分、客単価をあげるために食品購入を誘引し成功している。しかし、食品購入は、顧客の半分以上が店舗の席を利用することになっている。店舗設計上、席数を増加させることが売上拡大のレバーとなっており、席あたりの坪数も0.42まで詰めている。

スタバは、標準オペレーション(バリスタが18秒から23秒の間にエスプレッソを準備)が決まっている。顧客経験上、レジ前から受け取りカウンターまで移動するという手間を取らせている。顧客の待ち時間のタイムクロックがスタートするのを遅らせているという。注文から1分を過ぎ、残り2分程度で飲料が提供される。レイアウト上は、たったレジ前から受け取りカウンターまで2mほどしかないのだが、新鮮なコーヒーの提供にはどうしても必要な空間となっているということとくくれる可能性がある。

Takeaway:サードプレイスというスタバの虚像

スタバは飲み物売上構成比が74%にもなる、70%以上がテイクアウトという特徴から、顧客数がドトールの倍ほどになる。スタバは学生などの宿題の場や、サラリーマンの仕事場、かつては存在しなかったくつろぎの場と言われるが、その場所のコストは飲み物売上構成が高く、多くのテイクアウト客により、賄われていると言ってよい。

その意味で、スタバはカフェというよりもコーヒーテイクアウト屋と言える。70%がテイクアウトとなる。残り30%の顧客のために席を設けているが、席あたりの坪数はドトールよりほんの少しだけ大きい0.46となっている。

Takeaway:選びに選んだロケーション勝負で勝つ

FL比率という意味で他のカフェやレストランチェーンではなし得ないFL比率を実現し、高賃料や家具の単価を上げても出店して利益がでるビジネスモデルを構築している。例えば、飲食店業界のFL比率は70%ないとやっていけないと言われるが、スタバはすべての店を現在の平均坪単価26,000円の場所から、坪単価35,843円の場所に映っても利益がでる計算となる。35,843円は渋谷、新宿、有楽町などのメガステーションに代表される駅近くの坪単価である。

次元の違う戦略をうまく統合するスタバ

神戸大学の三品和広教授によれば、戦略は以下の次元にわけられるという。

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構えの次元においては、レイアウトによって、フレッシュなコーヒーを楽しめるように作っているということだと思われる。

立地の次元が、とても面白い。そもそもコーヒーに300円以上も払わせるために、そういう客しか来ないところを選びに選ぶということに出ている。ドトールはコーヒーは安くても、客単価を上げないと事業が成り立たなくなる可能性があり、安いコーヒーとセットで他の商品を上手にかわせるようにしている。しかし、スタバは、そもそもコーヒーを飲みに来る顧客しか来てもらわなくてもよいという、ある意味であきらめの良い、コーヒーの提供にこだわった戦略をとっていると言ってよい。つまり、それなりの値段でも買いに来てくれる場所はどこにあるかということを考えに考えないといけない事業になっている。

ロケーション戦略の分解

なぜここに至ったかは省略するが、スタバはそれなりの値段のするコーヒーを販売して顧客を得るためのロケーション選びに以下のようなデータを活用している可能性は高い。

近隣の収入
収入情報は、スタバが新しい店を開く前に考慮する多くの主要な要因の1つです。新しい店舗には、世帯収入の中央値が600万以上の地域が優先されている可能性が高い


年齢
できるだけ多くの顧客にリーチしようとしていますが、スタバの主な目標は、人口の大部分が18〜40歳の地域をターゲットにすることであると考えられる。


ランドマーク/オフィス
ランドマークや、大学、オフィスなどがある場所を選んでいる可能性がある。

交通
交通データから、特に新しい店舗の場所を決定する際に重要な情報を取得しているはずである。開店したい場所から数百台の車両が通過すると、ビジネスが成長する可能性が高くなる。スタバは、1日あたり少なくとも25,000台の車両の交通量がある道を選んでいる可能性がある。


視認性
スタバの優先ロケーションは、どこからでも見えるコーナーなども好みとなっている。できるだけ目に見えるようにしたいので、簡単な入口と出口のある道路に面していることを好んでいるようである。


歩行通勤へのルート
朝に最初に必要なのはコーヒーであるという戦略から、帰宅途中ではなく仕事に行くときにコーヒーを飲むので、通勤のその歩行上のルート上に店舗を構えていることが多いと考えられます。


他のビジネスへの近さ
スタバは日本では特に店舗へのトラフィックにお金をかけなくてよい複合施設にも多く構えている。とくに地方においてはその戦略をとっているようだ。


まとめ

スタバは、コーヒー一杯を売ることに徹底的こだわっている。

まずお店でおいしいという情緒的なことを提供できるよう標準作業が徹底されている。

標準作業が守れるようにレイアウトに工夫がある

値段はそれなりにするので、そういう顧客に来てもらうためのロケーション選びに莫大な情報を活用している。

サードプレイスというのは、単に顧客やどこかのマーケターが言っていることであり、ビジネスとしてはテイクアウト7割で回っており、そのビジネスモデルでは、巨大ターミナルに巨大店を構えても利益がでる可能性がある。



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