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新型コロナがもたらすのは、オフィスのプロダクトイノベーション

こんにちは、Tokyo Creators' ProjectのWorkplace Scientistです。この記事では、オフィスが果たしている機能や効能について、再検討を求められている人(不動産関係者、総務の方々等)に向けて、オフィスについて、歴史的なバックグラウンドを知っていただくことを目的に書きました。

ここ数週間でリモートワークが急激に導入され、スカスカオフィスが大量発生しました。その状況を踏まえて、「オフィスの意味」を再検討し実際に縮小・無くす決定をした会社もたくさん出てきています。

記事にされている例でも以下があります。

https://note.com/suzukiyuto/n/n8a1c24989668

遠い過去のようですが、つい2ヶ月前まで人員増加に伴うオフィス移転を予定していました。80以上の提案を受け、20以上の内見をして、(だいたい審査に落ちつつ)ようやく中目黒に約50坪のなかなか素敵なオフィスを見つけて、ついに契約書に判子を押すだけだ! と思った矢先にコロナの状況が悪化。そして今回、オフィス自体をなくす意思決定をしました。

https://dev.classmethod.jp/articles/ceo-telework/

テレワークはじめて3ヶ月目に突入してしまいました。最初は社員からのクレームが結構あったのですが、とりあえず自宅に環境を整えて欲しくて全員に5万円を配り、それぞれが環境を整え、まぁ楽しむしかないかーぐらいの感じで続けた結果、これが日常になりました。そうです、社員の人数分入るオフィスは不要だったのです。そこで、3月末に勢い余って3フロア分を解約してしまいました

Tokyo Creators' Projectのブログでも、「自社」のスカスカオフィスに対する定量化策をサポートする案を提示しました。

スカスカオフィス問題に対応する定量化策

https://tcproject.jp/n/nbb41e784a80f

オフィスはどこからきてどこに行くのか、まず過去を知りたい

しかし、そもそも、オフィスは一体どこからきて、この先どこにいくのでしょうか。いったん「自社」だけでなく「他社」も含めた全体の流れを理解したほうが良いのではないかと思い、まずは過去を整理したいと考えました。

ニューヨークから始まった、オフィスビルの商品コンセプト

オフィスビルというプロダクトイノベーションは、建築家ミース・ファン・デル・ローエのスケッチによって構想され、1952年設計事務所のスキッドモア・オーウィング・アンド・メリルによって、ニューヨークのリーバーハウスとして、完成しました。

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https://en.wikipedia.org/wiki/Lever_House

マンハッタンの5 Avenue-53 St Stationから徒歩で約10分ほどのところに、今もその姿を見ることができるので、新コロナが落ち着いたあと、ぜひNYCに行かれることがあれば通りかかってみてください。

何が新しかったのか

当時にしては、新素材であった鉄とガラスとコンクリートに覆われる、大型でガランとした基準階をそのまま積み上げ、均質な空間を作り上げるという点で、新しい製品だったのでした。それまでは、大理石やインド砂岩などの原産地が限られる材料を使っているのに対して、鉄やガラス、コンクリートは大量生産され、調達が容易だったことも要因でした。また時代背景として第2次世界大戦で、戦勝国になったアメリカの自動車メーカーなども国内消費されていたことも、さらに大量生産によりコスト安を生んだ要因になっています。

技術革新ではない「イノベーション」が起こった

私たちは、イノベーションという言葉を技術革新という言葉で使いがちですが、イノベーションという言葉を初めて使ったヨーゼフ・アロイス・シュンペーターによれば、イノベーションの定義は「既にあるものの新たな組み合わせ」だそうです。シュンペーターは、イノベーションを以下の5種類に分類しました。

①新しい生産物の創出(プロダクト・イノベーション)
②新しい生産方法の導入(プロセス・イノベーション)
③新しい市場の開拓(マーケット・イノベーション)
④新しい資源の獲得(サプライチェーン・イノベーション)
⑤新しい組織の実現(組織イノベーション)

特にここでは、高品質で、早く建てられ、安価なプロダクトイノベーションが起こったのです。

「新しい職場」を体現する場所だったオフィス

ロックフェラーセンターやエンパイヤーステートビルディングとともに、マンハッタンのスカイラインを形成します。以下は1952年のマンハッタンのスカイラインです。(スカイラインという言葉はここから生まれたそうですね)

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日本では、日比谷公園前の日比谷U-1ビル(旧大和生命ビル1984年竣工)が、ドラマの撮影にも使われるぐらい、オフィスビルと言えば、という形が形成されました。日本ではアニメでもシティーハンターのエンディングで使われたTMNのStill Love Herを聴くと、「東京は新宿の高層ビル群」を思い浮かべる方も多いのではないかと思います(お前何歳やねん!と言われそうですが)


商品改良の面では、構造形式としてシングルコアからダブルコアへ、無柱空間作りにモデルチェンジが進められ、表面も鉄骨構造にはめこむ方式で、意匠の変化や工法の合理化もなされてきたようであるが、基本的にリーバーハウスから始まったオフィスという製品はドミナントデザインが決まったのでした。

誰が使ったのか

オフィスビルの主力ユーザーは、なんといっても大企業でした。米国でもフォード、ジェネラル・モータース、ジェネラル・エレクトリックなど、ベルトコンベヤーに象徴される大量生産、大量販売を展開する企業でした。つまり、工場は地方にあり、いわゆる間接業務である、経営企画、マーケティング、人事、総務、財務などの部門に、数千人規模のホワイトカラーが従事する場所として使われていったのでした。

何に使ったのか

そして、オフィスビルの間接業務はすべて自社内で賄うのが当然でした。その仕事は受発注管理や業績管理などのいわゆる定型業務で、先輩からの口伝伝承か、業務手順書によって受け継がれ、所定の書式・帳票を埋める格好で進められた。つまり、均質で標準化された仕事に、同じく均質な人材が集まって仕事をするには、この均質で大型の空間を積み重ねたオフィスビルという商品はぴったりだったのだ。日本のオフィスは、課いう島があり、そこでは十数人のスタッフが向かい合わせに座り、管理職が島の端、さらに、上位の管理職は島から離れた窓際に位置するというレイアウトに最適化されました。机や椅子は、進駐軍以来の灰色のスチール家具、グレーの背広と白ワイシャツがセットだったのです。

1980年台に訪れたOA(Office Automation)化

このような間接部門には、日本においてもOA(Office Automation)化の波が訪れた。大量の情報機器が導入されたように思えた。しかし、この時代に生きた先達の意見を聞けば、OA化の前に、間接業務自体をスリム化する手順を飛ばしたため、ホワイトカラーの生産性が向上しないケースも多かったため、オフィス空間としては、耐荷重と電源対策を強化して、スチール家具をOA家具に変えるという、製品のマイナーチェンジを施すことで、このオフィスビルという製品は生き延びてきました。

オフィスビルに訪れた転換期

1990年代、2000年代、そして2010年代にはOAという言葉が、パソコン、インターネット、AIという言葉に変わっただけのように思えるのは私だけでしょうか。このようにして、多くの大企業を中心とした都市ゆえに、大勢のホワイトカラーが都心に集まり、定型的な間接業務を粛々と進めるというワークスタイルは都度、転換期をもたらした。アメリカでは、このOA化から始まる転換期で、多くのB2B向けの企業が成長しました。マイクロソフトはWindowsとExcel。デルはビジネス向けコンピュータで。HPはバックエンドをサポートするサーバーで、IBMはメインフレームからコンサルティングまでという風に。

オフィスビルに訪れた寿命

間接業務の合理化は、広大なフロアではなく、可変性を求めています。大企業といえども、ビジネスや製品自体が大きくならない限り、ポストが増えることはなくなり、文字通り席が作られなくなっています。まだ一部の会社では系列会社に出向転籍をすることで、業務合理化を形としては実現しつつ、新しい雇用機会が創出することができたといわれてきましたが、直接部門である工場や倉庫も合理化はより進み(場合によっては間接部門の人材のスキルは直接部門では役に立たない)、残されたのは間接部門のポストと席のみとなってきているようです。中間管理職が得意とすべきだった、上と下との情報のコネクションは、まずメールなどによって直接経営者と現場の社員が話す機会ができ、課や島の垣根が文字通りなくなってきていました。

やっとわかったリモートワークの意味

今やっているリモートワークは、自宅から仕事をするという意味で使われていることが多いのですが、リモートワークの本丸は、実は間接業務仕事のオンライン化だったのではないでしょうか。大企業の40%くらいは、新コロナの前も、リモートワークができる制度はあったとのことですが、実際に使えていないのは、業務がオンラインでできていないことにあったからであると考えます。

オフィスが本当に使えない場所になってしまう

強制的に職場に行けなくなった昨今は、急激にオンラインでの仕事完遂が進んでいます。それは1980年代のOA化の波の時にもやっていなかった業務のスリム化による生産性向上という宿題をいま大急ぎでやっているに過ぎないのかもしれません。

以上のように、オフィスビルという70年ほど続いてきたベストセラー商品もそろそろ寿命が見えてきたように思います。ここにどういうイノベーションが起こっていくのかについて、いろいろ議論を展開していきたいと思います。

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ワークプレイスを軸に、様々な専門領域を持つクリエイターたちのシナジーによって、既成概念を超えたソリューションの提供を目指す。働き方や働く環境に関するご相談・お問い合わせはこちら:info@tcproject.co
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